稲荷明神が相槌を打った小狐の剣
どんな伝承か
昔、一条院が不思議なお告げを受け、三条に住む刀工の小鍛冶宗近に剣を打つよう命じた。宗近は勅命を受けたものの、相槌を打つにふさわしい者がおらず困り果て、稲荷明神に願をかけた。すると童子が現れ、和漢の名剣にまつわる故事やその威徳を語り、力を貸そうと約束して稲荷山へ姿を消した。宗近が注連縄を張った壇に上がって祝詞を唱え、神々に祈ると、稲荷明神が現れて相槌を務めた。仕上がった剣には表に「小鍛冶宗近」、裏に「小狐」と銘を刻んで勅使に献じ、明神は稲荷山へ帰ったという。狐が稲荷の神使として人と交わった例とされる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
暮しの中の妖怪たち(岩井宏実・岩井宏実・民俗学・1986年(昭和61年))
『暮しの中の妖怪たち』は、岩井宏實が昭和六十一年に著した妖怪の概説書である。鬼・天狗・河童から山姥、産女、雪女、怪火、ザシキワラシ、化け猫、狐狸、幽霊まで、各地の伝承や古典・絵画に見える妖怪を一つずつ取り上げ、その姿と仕業を説く。第I章で個々の妖怪を紹介し、第II章で妖怪の性格、出現の空間と時、正体を論じ、巻末に著者が資料とした妖怪の本の一覧とあとがきを置く。