転居先まで追ってくる長屋の降石
どんな伝承か
円了の知人の近藤氏が、疑いようのない事実だと前置きして語った話。嘉永六年七月、盆が過ぎた頃、小石川戸崎町のある長屋に、柿の実ほどの大きさの小石のようなものが突然降ってきた。それからは毎日石が降り続き、家の鍋や釜をことごとく壊すまでになった。住人は急いでその長屋を引き払い、本郷田町へ移ったが、怪しいものは新しい家をめがけてなおも石を降らせ続けた。これではとても江戸にはいられないと、一家は田舎へ移り住んだという。このときは原因がまったく分からなかった。
原典より
それがきっかけで、それから毎日降石がつづき、その家の鍋や釜をことごとく破壊するに至った。—— 井上円了 妖怪学講義(井上円了 著・平野威馬雄 編) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
井上円了 妖怪学講義(井上円了 著・平野威馬雄 編)
『井上円了 妖怪学講義』は、明治期に哲学館で講じられた井上円了の『妖怪学講義』から要所を選び、平野威馬雄が現代の文章に改めて編んだ抄録である。狐憑きや化物屋敷、怪火、幽霊、コックリなどを題材に、円了が古書から抜き出した記事、各地から寄せられた報告、円了自身の現地での調べを収める。原著の八部門のうち理学・心理学・宗教学・雑の四部門を章に立て、序で研究の経緯と分類を、結びで編者の見方を述べる。