金扇を太陽に象る那智の扇神輿
どんな伝承か
熊野那智神社の扇幣は、幣と幡の中間のような華やかなものである。開いた金の扇六本を円くまとめて太陽になぞらえ、それを丈の高い竿の頂に付けて、美しい幡を垂らす。これを枠に取り付けたものを「扇神輿」と呼び、七月十四日の祭りには十二体の扇神輿が巨大な松明に先導されて那智の滝まで渡御する。その様はまことに壮観だという。著者はこれを、頭屋が大きな御幣を組み立てて神前に納める奉幣神事のうち、とりわけ華麗な例として挙げている。
原典より
これを枠にとりつけて「扇神輿」と称し、これが十二体七月一四日の祭りに那智滝まで巨大なたいまつの先導によって渡御するのはまことに壮観であるという。—— 日本民俗学大系 第8巻――信仰と民俗(原田敏明・池上廣正・堀一郎ほか) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本民俗学大系 第8巻――信仰と民俗(原田敏明・池上廣正・堀一郎ほか)
『日本民俗学大系 第8巻――信仰と民俗』は、原田敏明・池上廣正・堀一郎ら十二人の執筆者による論文集である。民間に伝わる神と霊の観念、家や村の氏神、職業の神、祭りの日取りと組織、憑きものや妖怪を題材に、各地の調査報告や古記録に見える事例を引いて論じる。原田の総説に始まる十七編からなり、後半では修験道・庚申信仰・キリシタン・新興宗教と民間信仰とのかかわりを扱う。