官符なしで帰郷できた小野氏の氏神祭り
どんな伝承か
古くは、都や他国に出て仕えている人も、春と秋の氏神祭りには生まれ故郷へ帰るのがならわしで、制度としても認められていた。原典はその裏付けとなる文献をいくつも挙げるが、そのひとつが『続日本後紀』承和元年二月辛丑の条である。そこでは近江の小野氏神社について、毎年春秋の祭りのときには官符を待たずに、いつまでも行き来してよいとされている。氏神の祭りのための帰郷が、とくに許された例である。
原典より
『続日本後紀』の承和元年(八三四)二月辛丑の条によると、近江にある小野氏神社に対して、「毎年至春秋之祭、不待官符、永以往還」ともある。—— 日本民俗学大系 第8巻――信仰と民俗(原田敏明・池上廣正・堀一郎ほか) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本民俗学大系 第8巻――信仰と民俗(原田敏明・池上廣正・堀一郎ほか)
『日本民俗学大系 第8巻――信仰と民俗』は、原田敏明・池上廣正・堀一郎ら十二人の執筆者による論文集である。民間に伝わる神と霊の観念、家や村の氏神、職業の神、祭りの日取りと組織、憑きものや妖怪を題材に、各地の調査報告や古記録に見える事例を引いて論じる。原田の総説に始まる十七編からなり、後半では修験道・庚申信仰・キリシタン・新興宗教と民間信仰とのかかわりを扱う。