宮中の陣で胡簶と剣を奪う狐
どんな伝承か
三代実録の元慶五年正月の記事。この月、宮中の諸衛の陣で怪異が相次いだ。右近衛の陣では大将以下の座に狐がしきりに糞をし、宿直していた府掌の下毛野安世の座には小便をかけた。近衛の笠吉人は胡簶の緒を狐にくわえられ、引っ張っても放さず、緒が切れて持ち去られた。左兵衛の陣にも狐が現れ、納めてあった剣をくわえて逃げたので、兵衛たちが追いかけて取り返したという。
原典より
近衛笠吉人胡 緒、爲狐所 去。人執而引之。狐猶不放。—— 動物妖怪譚(日野巌・日野巌・動物妖怪譚・1926年(大正15年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
動物妖怪譚(日野巌・日野巌・動物妖怪譚・1926年(大正15年))
『動物妖怪譚』は、日野巌が大正六年に筆を起こし、大正十一年の跋と大正十五年の再記を添えて著した伝説の動物の研究書である。鬼・天狗・河童・人魚・雪女・龍・雷獣・狐・狸・獏・鯰・猫など二十六の項目を立て、記紀や万葉集から近世の随筆までの記事を原文の引用ごと示して起源と変遷をたどり、動物学の知識で正体を考える。總論で起原・歴史的変遷・分類などを論じ、結論では迷信から科学へ近づくことを説いて閉じる。