高陽川の女の童に化けた狐
どんな伝承か
『今昔物語』によると、仁和寺の東を流れる高陽川のほとりに、夕暮れになると若い女の童が立ち、京へ向かう馬の人に後ろへ乗せてくれと頼んでは、途中で飛び降りて狐の姿で逃げることが続いた。腕に覚えのある若い滝口が捕らえてみせると請け合い、女の童を鞍に縛りつけて連れ帰ったが、仲間の前で放すと狐となって逃げ、気づけば自分は鳥部野の中にひとり立っていた。後日、強い従者を連れて再び出かけ、今度は狐を捕らえて松明で毛を焼き、何度も射たうえで放してやった。十日あまり後に行くと、女の童は病んだ様子で、焼かれるのはたまらないと言って消えたという。
原典より
其の時に、女の童狐に成てこうくこ鳴て逃ぬ。—— 動物妖怪譚(日野巌・日野巌・動物妖怪譚・1926年(大正15年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
動物妖怪譚(日野巌・日野巌・動物妖怪譚・1926年(大正15年))
『動物妖怪譚』は、日野巌が大正六年に筆を起こし、大正十一年の跋と大正十五年の再記を添えて著した伝説の動物の研究書である。鬼・天狗・河童・人魚・雪女・龍・雷獣・狐・狸・獏・鯰・猫など二十六の項目を立て、記紀や万葉集から近世の随筆までの記事を原文の引用ごと示して起源と変遷をたどり、動物学の知識で正体を考える。總論で起原・歴史的変遷・分類などを論じ、結論では迷信から科学へ近づくことを説いて閉じる。