城郭を現し行列を真似る狐の群れ
どんな伝承か
南部の七戸では、年々二月の末の薄曇りの日に狐隊が現れると伝え、村人たちはこれを見に行った。初めに狐がたくさん出て来るのを手を拍って褒めると、やがて二丁ばかり向こうに城郭の形が現れる。さらに甲冑を帯びて馬に跨がった二百ばかりの陣立てが見え、こちらから頻りに声をかけると、諸侯の行列を二度なし、一度は松前侯、一度は津軽侯の行装を真似たという。南部の狐なので南部侯の行列の真似は遠慮するものと見えると評された。見る人が多く声が繁ければ狐の人数も花々しく見え、人も声も少なければ寂しいと『閑山筆』は記している。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
動物妖怪譚(日野巌・日野巌・動物妖怪譚・1926年(大正15年))
『動物妖怪譚』は、日野巌が大正六年に筆を起こし、大正十一年の跋と大正十五年の再記を添えて著した伝説の動物の研究書である。鬼・天狗・河童・人魚・雪女・龍・雷獣・狐・狸・獏・鯰・猫など日本の伝説に現れる動物を取り上げ、記紀や万葉集から近世の随筆までの記事を原文の引用ごと示して起源と変遷をたどる。序論で起原・歴史的変遷・分類を論じたのち二十六の項目を立て、結論では迷信から科学へ近づくことを説いて閉じる。