笄橋の下屋敷にいた尾二股の古猫
どんな伝承か
麻布の笄橋にあった堀田備中守の下屋敷では、天保九年の春ごろから怪しいことが続いた。家中の者はもちろん、外から出入りする者までが次々に誑かされ、命を落とす者まで出たという。狐狸のしわざではないかと恐れた家中は評議のうえ、領分である下総佐倉の百姓で狐釣りの名人と評判の惣兵衛を呼び寄せた。惣兵衛が魚や鳥を餌にして釣り上げた狐は六、七匹、いずれも打ち殺した。ある夜、とりわけ騒がしいので、また狐だろうと大勢で駆けつけたところ、捕らえたのは大きな犬よりなお大きく、尾が二股に裂けた古猫だった。これを打ち殺すと怪異はやんだ。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
動物妖怪譚(日野巌・日野巌・動物妖怪譚・大正・昭和初期)
博物学者・日野巌の古典的妖怪研究『動物妖怪譚』の前半(總論〜多爾具久)。