源平の乱世と養和の大飢饉
どんな伝承か
建礼門院に仕えた女房・右京大夫は、源平争乱の渦中にあった悲運の女性である。家集『建礼門院右京大夫集』には、都に届く戦乱の噂に胸を乱し、風の音にすら怯えて夢に見るほどの不安の日々が綴られている。元暦二年、平家一門が壇の浦で滅んだと聞いた時、彼女は嘆きを超えて放心状態に陥ったという。戦乱に巻き込まれた人々にとって、もはや妖怪や幽霊の入り込む余地さえなかったという、生々しい記録である。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の妖怪(早川純夫・早川純夫・妖怪史・1973年(昭和48年))
『日本の妖怪』は、早川純夫が一九七三年(昭和四十八年)に著した妖怪史の読み物である。『出雲風土記』『日本書紀』から『日本霊異記』『今昔物語』、江戸の『新著聞集』などの随筆までの古典に記された妖異を、かかわりのある実在の人物や事件とともに古代から近世へ時代順にたどる。全八章で、引用は意訳を交えて『』でくくり、仏教談や霊験談、地方の民話はおおむね除き、第七章には江戸の見聞録から選んだ二十話を並べる。