大火の炎の上を駆ける異形の騎馬
どんな伝承か
肥前平戸藩主・松浦静山の随筆『甲子夜話』には、天明八年(一七八八)一月三十日の京都大火にまつわる天狗の見聞談が記されている。夕刻、一軒の荒物屋から出た火は強風にあおられて瞬く間に燃え広がり、禁裏や二条城までも包む大火となった。このとき山の上にある寺院で、ある寺僧が甲冑をまとい馬にまたがった異形の者たちが火焔の上を群れをなして奔走するのを目にしたが、夜が明けるとともにその姿は消え失せたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の妖怪(早川純夫・早川純夫・妖怪史・1973年(昭和48年))
『日本の妖怪』は、早川純夫が一九七三年(昭和四十八年)に著した妖怪史の読み物である。『出雲風土記』『日本書紀』から『日本霊異記』『今昔物語』、江戸の『新著聞集』などの随筆までの古典に記された妖異を、かかわりのある実在の人物や事件とともに古代から近世へ時代順にたどる。全八章で、引用は意訳を交えて『』でくくり、仏教談や霊験談、地方の民話はおおむね除き、第七章には江戸の見聞録から選んだ二十話を並べる。