紫宸殿の前の大鬼と鬼絞の叫び
どんな伝承か
光孝帝の治世の仁和二年七月二十九日の夜、紫宸殿の前にとてつもなく背の高い鬼が現れ、夜の見回りをしていた者はそれを見て気を失った。右近の陣で篝火をたいていた者も、この鬼の姿を見かけたという。そのあと、左近の陣のあたりから、まるで首を締め上げられているような人の叫び声が響いた。世の人々はこれを鬼絞と呼んだ。翌日には五畿七道を大地震が襲い、この夏から秋にかけて、天災と怪異が相次いで起こったとされる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の妖怪(早川純夫・早川純夫・妖怪史・1973年(昭和48年))
『日本の妖怪』は、早川純夫が一九七三年(昭和四十八年)に著した妖怪史の読み物である。『出雲風土記』『日本書紀』から『日本霊異記』『今昔物語』、江戸の『新著聞集』などの随筆までの古典に記された妖異を、かかわりのある実在の人物や事件とともに古代から近世へ時代順にたどる。全八章で、引用は意訳を交えて『』でくくり、仏教談や霊験談、地方の民話はおおむね除き、第七章には江戸の見聞録から選んだ二十話を並べる。