胎児を残して葬る「荷ヲカケル」の忌み
どんな伝承か
妊婦が亡くなると腹の子を取り出してから葬る風は、かつて広く行われていたらしい。高知県の土佐山では、胎児を腹に残したまま埋葬することを「荷ヲカケル」と呼んで忌んだという。『土佐山民俗誌』には、昔は夫がカシの柄の鎌で腹を割いて子を取り出したという伝えや、母と子を二つの棺に分けて葬ったことも記されている。著者は、まもなく生まれ変わる命を宿したままでは、妊婦が死後の世界に落ち着けないと考えられたのだろうとみている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
霊魂の行方(最上孝敬・最上孝敬・葬送民俗・1984年(昭和59年))
『霊魂の行方』は、最上孝敬の葬送習俗に関する論説を集め、名著出版が昭和五十九年に刊行した論集である。死者の霊を家から送り出す霊送りやカラダビ、骨掛け、男女別墓制と半檀家、無縁仏、盆と施餓鬼、葬儀の水など、千葉・埼玉をはじめ各地で聞き取った習俗と既刊の報告をもとに論じる。「霊送りとその周辺」「葬送の諸問題」「葬祭の民俗」の三章に二十八篇を収め、巻末に初出一覧、大島建彦の解説、年譜、著作目録を付す。