八十八と書いた餅を撒く老人の葬
どんな伝承か
七十歳を過ぎて死んだ人には悔やみを言わず、むしろめでたいことと考えるべきだという風が各地にある。福島県の勿来・植田あたりでは、七十代の人が亡くなると、赤い字で八十八と書いた餅を出棺のときに撒く。八十代の人が亡くなったときは百と書いて撒く。撒く代わりに配ることもあるという。その家には赤い幕を張りめぐらし、まったく祝いの形にするのだという。老人の死のときには、寺へ持ってゆく四十九餅や、棺に取りつけたゼンの綱を人々が争って奪い合う風も方々に伝えられている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
霊魂の行方(最上孝敬・最上孝敬・葬送民俗・1984年(昭和59年))
『霊魂の行方』は、最上孝敬の葬送習俗に関する論説を集め、名著出版が昭和五十九年に刊行した論集である。死者の霊を家から送り出す霊送りやカラダビ、骨掛け、男女別墓制と半檀家、無縁仏、盆と施餓鬼、葬儀の水など、千葉・埼玉をはじめ各地で聞き取った習俗と既刊の報告をもとに論じる。「霊送りとその周辺」「葬送の諸問題」「葬祭の民俗」の三章に二十八篇を収め、巻末に初出一覧、大島建彦の解説、年譜、著作目録を付す。