守り神の大蛇を撃った樽の酒屋
どんな伝承か
群馬県勢多郡横野村樽の造り酒屋は、かつて棟の数が四十七もあった栄えた家である。この酒屋の守り神は大蛇で、毎年三十六石入りの六尺の大樽に酒をいっぱいに満たして供えるならわしだった。当主は、この蛇さえいなければその酒を売って儲けられるのにと考えるうち、昼日中から酒倉の前に出てきて人を見ても驚かない大蛇が憎くてたまらなくなり、ついに火縄銃で撃ち殺してしまった。その後は不運が続き、さしもの豪家も倒れてしまったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
河童・天狗・妖怪――民俗随筆(武田静澄・武田静澄・民俗随筆・1956年(昭和31年))
『河童・天狗・妖怪――民俗随筆』は、武田静澄が昭和三十一年に著した民俗随筆である。天狗と神かくし、河童、座敷わらし、山の神と山の妖怪、狐狸とつきもの、水辺や海の亡霊、死霊と御霊などをめぐる伝承を、『今昔物語』などの古典の説話と各地の民俗の事例から集めて語る。短い見出しを立てた小文を連ねる形をとり、神かくしにあう心理や幻覚、お化けの心理にも触れて、妖怪を信じる心のはたらきを考える。