入山の狩人が秘蔵するオコジョ
どんな伝承か
群馬県吾妻郡の山村入山では、狩人が山に入るとき必ずオコジョ(オコゼ)を携えて行く。うかつに差し出すと手まで引き抜かれるとして、左手で差し上げますと繰り返し唱えながら実際には右手で出し、和歌山の山地と同じくふところ手で半分だけのぞかせる。こうして山の神に供えれば獲物に恵まれると信じられている。代々伝わるオコジョは頭の大きな魚の干物で、猟師の頭である山さきが固くしまい込み、家の者にさえ見せない。人に見られると効き目が失せるからだという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
河童・天狗・妖怪――民俗随筆(武田静澄・武田静澄・民俗随筆・1956年(昭和31年))
『河童・天狗・妖怪――民俗随筆』は、武田静澄が昭和三十一年に著した民俗随筆である。天狗と神かくし、河童、座敷わらし、山の神と山の妖怪、狐狸とつきもの、水辺や海の亡霊、死霊と御霊などをめぐる伝承を、『今昔物語』などの古典の説話と各地の民俗の事例から集めて語る。短い見出しを立てた小文を連ねる形をとり、神かくしにあう心理や幻覚、お化けの心理にも触れて、妖怪を信じる心のはたらきを考える。