中川土手で聞いた電撃のような声
どんな伝承か
五井昌久は、憑かれたように病気治しに歩きまわり神を呼び続ける生活を送っていた。ある日、亀有の家を出て病家へ向かう道すがら、病人のことも考えず、ただ神様、神様と念じながら胸を張って歩いていた。中川土手の桜若葉は日に映え、川面のさざ波が光っていた。自然の美しさに半ば溶け込みながら、世から病苦と貧苦を除かねばこの美しさに全身を溶け込ませられないと感じ、私のいのちを神様のおしごとにお使いください、と祈り続けた。向こう岸へ渡る舟着場まで来て土手を降りようとした瞬間、お前のいのちは神がもらった、覚悟はよいか、という電撃のような声が響き、彼は心で「はい」と答えた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
鎮魂行法論――近代神道世界の霊魂論と身体論(津城寛文・津城寛文・宗教学・平成(著述))
宗教学者・津城寛文『鎮魂行法論―近代神道世界の霊魂論と身体論』。近代以降の神道界に展開した『鎮魂行法』を、霊魂論・身体論・シャーマニズム論の観点から体系的に分析する。