漱石の幽体離脱に近い体験
どんな伝承か
明治四十三年八月、夏目漱石は修善寺温泉に滞在していたとき胃潰瘍で大量に血を吐き、生と死の境をさまよった。その頃の思いを綴った『思ひ出す事など』で漱石は、臆病者の自分には化け物に出会う資格があると思っていたし、心の弱ったときにはいつも幽霊を信じたが、これまで不思議な出来事に出会う機会はなかったと述べる。ラングの『夢と幽霊』を床の中で読んで灯を寒々と感じたことや、フラマリオンの本を外国から取り寄せ、ロッジの『死後の生』を読んだことにも触れている。同じ書の別の章には、大吐血から五、六日たった頃、心霊研究者のいう幽体脱離に近いような体験をしたという追憶が記されている。
原典より
またこの書の二十には、大吐血後五、六日目に経験した、一部の心霊研究者たちの言う、”幽体脱離”現象にちかいようなことの追憶が記されている。—— 新霊交思想の研究――新スピリチュアリズム・心霊研究・超心理学の系譜(田中千代松・田中千代松・心霊研究) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
新霊交思想の研究――新スピリチュアリズム・心霊研究・超心理学の系譜(田中千代松・田中千代松・心霊研究)
『新霊交思想の研究――新スピリチュアリズム・心霊研究・超心理学の系譜』は、田中千代松が著した思想史の研究書である。死者の霊との交信を説く新スピリチュアリズムと、そこから生まれた心霊研究、さらに超心理学までの系譜を、社会思想史の観点から科学と宗教の闘争史としてたどる。全七章と結語から成り、欧米での勃興、クルックスらの実験研究、マルクス主義からの攻撃、SPRとASPR、井上円了と福来友吉、ラインの実験と超心理学の限界を順に論じる。