金の矮鶏の古井戸と消えた大皿
どんな伝承か
若杉区の納骨堂の南側に広がる台地は、『筑前国続風土記』の高鳥居城の記事に、城のあったころ侍たちが住んだ屋敷跡で今も井戸が残ると書かれた「殿の屋敷」にあたる。この古井戸では大晦日の除夜の鐘のとき金の矮鶏が鳴くと伝えられ、水田の中にあるこの井戸の石蓋を開けた人によると、中は周りを石で積んだ水のない井戸で、底には平たい大岩があってその先は掘れなかった。井戸の近くの田では畔が何度も崩れ、大正三年に築き直していた持ち主が三枚重ねの大皿を掘り当てた。洗って水を注ぐと牡丹の絵が浮かぶ見事な焼き物で、家宝にしようとしたが、噂を聞いた県の職員を名乗る男が博物館に納めると言ってわずかな金で持ち帰り、皿はそれきり行方がわからない。
原典より
「これは珍しい物が出てきた」と、渓流で洗うと、実に立派な陶器で水を注ぐと、牡丹の絵が浮びあがりました。—— 篠栗町誌 民俗編――伝説・怪異(篠栗町(編)・篠栗町誌) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
篠栗町誌 民俗編――伝説・怪異(篠栗町(編)・篠栗町誌)
『篠栗町誌 民俗編――伝説・怪異』は、筑前の篠栗町の町誌民俗編から伝説の章を収めた部分である。鉾立山の玉依姫、若杉山の岩にまつわる弘法大師や鬼の伝承、薬師・地蔵・観音の霊験、平家岩や古井戸の言い伝えを番号つきの項で並べ、『筑前国続風土記』などの地誌や説明板の文を引く。後半では狐に化かされた話や狐憑き、狸の法座、巷の笑い話、若杉山の白蛇と杵蛇、河童の話を、古老の語りを交えて記す。