作神さまの縁日と今川焼の男
どんな伝承か
若柳土橋の作神さまの縁日には、県南各地から参詣者が集まって終日賑わった。大正の初め頃まで一帯は稚松が点在する広い原野で、参詣を終えた群集は方々で酒宴を開き、参道には出店が並んだ。語り手は父からもらった一銭を握って店を見て回り、今川焼の店の前に立った。魚箱を並べた台の上で焼く無愛想な男は、値を聞かれても傍の板を叩くだけで、そこには四個一銭と下手な字で書かれていた。二個買って五厘の釣りを受け取ったとき、後ろから同年輩の男が声をかけ、豊作で小麦が穫れた、玉砂糖をどっさり入れたなどと語り合った。子供には分からなかったが、それは男をからかう会話であった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
胆沢町史 11(民俗編4)――口承・伝説(胆沢町(編)・胆沢町史)
『胆沢町史 11(民俗編4)――口承・伝説』は、胆沢町の町史民俗編の一冊のうち、第四章「口承・伝説」を収めたものである。第一節は松浦佐用姫と高山掃部長者の伝説を扱い、胆沢・水沢周辺の伝説地を列挙したうえで、町内に伝わる佐夜姫の本地物の写本や『南部叢書』所載の「奥州胆沢高山実伝」を翻刻する。第二節「いさわの昔話」は大蛇・狐・むじな・飢饉・戦後の怪異などの話を番号順に並べ、第三節「いろいろな昔話」へと続く。