持参金をつけた犬神持ちの嫁入り
どんな伝承か
犬神持ちの言い伝えは四国一円に広く、中国地方では石見や長門、九州では豊後に多いとされる。石見の邇摩郡から著者が拾った例では、犬神持ちと名指される家はたいてい村でも指折りの資産家だった。それでも、あの家は犬神持ちだと言われてしまえば、年頃の娘に貰い手がつかない。そこで金子をいくら添える、田地から穫れる米を三十俵付けるといった条件を示し、持参金をつけて嫁がせたのだという。富があってなお、家筋の噂ひとつで縁組が成り立たなくなる土地の空気が読み取れる話である。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
つきもの持ち迷信の歴史的考察――狐持ちの家に生れて(速水保孝・速水保孝・憑きもの研究・1953年(昭和28年))
『つきもの持ち迷信の歴史的考察――狐持ちの家に生れて』は、速水保孝が昭和二十八年に著し、柏林書房から刊行した憑きもの筋の研究書である。島根の狐持ちの家に生まれた著者が自らの体験を語り、破談や絶交など迷信が今も残す実例、蛇持ち・犬神・外道・とうびょうなど十一種の類別、人狐物語や松江藩の御触書、隠岐の訴状などの文献を取りあげる。後半では近世中期以後の新興地主と村八分から迷信の発生を説き、柳田國男と恒松安夫の序を付す。