亀に彫った伊吹の枯木の祟り
どんな伝承か
白木町三田の正覚寺跡での話である。廃寺となった寺跡の薬師堂の傍らに、イブキという枯木が立っていた。医師の玄祐という者が、これを二尺ばかり切り取って亀の形に彫刻した。するとその夜から玄祐は襲われ、怪物が幾十となく出て来て彼を悩ませたという。玄祐はただちにこれをもとの所へ返した。国郡志下調帳には、玄祐が堂守の弥右衛門に断って木口二尺ばかりを切り取って帰ったところ、その夜から三夜続けて物魔が出て種々の異怪があり、恐れて四日目の早朝に弥右衛門方へ差し戻すと、その夜からは何事もなかったと記す。
原典より
またその寺跡にイブキという枯木がたっていたが、それを医師の玄祐というものが二尺ばかり切って亀の形に彫刻した、その夜から玄祐はおそわれ怪物が幾十となく出て来て、…—— 高田郡史 民俗編――伝説(高田郡(編)・高田郡史) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
高田郡史 民俗編――伝説(高田郡(編)・高田郡史)
『高田郡史 民俗編――伝説』は、広島県高田郡の郡史の民俗編のうち、伝説の部である。吉田町・美土里町・甲田町・八千代町・高宮町・白木町などに伝わる八岐大蛇退治、毛利元就の百万一心、弘法大師のいろは石、つきものを落とすというはりいぶきの枯木などの話を、土地ごとに取り上げる。多くの話に、かつて村々から提出された「国郡志下調書出帳」の該当記事を原文のまま並べ、古い記録と今の語りとを照らし合わせている。