名寄川をさかのぼる疱瘡神の夜の声
どんな伝承か
海沿いでひどく恐れられている疱瘡の神も、山奥へ入るとそれほど恐れられていない。名寄のコタンの人々は、昔から疱瘡にはかからないといってきた。疱瘡神は天塩川を通り、名寄川に沿って北見へ向かうときも帰るときも、サンルペンベというところを通るが、いつも通る道だから途中の者には何もしない、心配するなと夢で教えてくれたからだという。だから名寄の者はよそで疱瘡が流行っても、その話をして自分は名寄の者だと名乗れば罹らない。神が通るのはたいてい夜半で、棹で舟を漕ぎ上がるような音や人のざわめきが聞こえるが、出てみると誰もおらず川が流れているばかりだという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第1巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第1巻』は、叢書『日本伝説大系』のうち北海道と青森県の伝説を収めた巻である。人間の始めやコロポックル、アイヌの神謡、岩木山一代記、おしら祭文、義経や弘法大師の事跡、狐や大蛇の話、地名や神社の由来などを、口承の資料を中心に採る。伝承地を記した例話を冒頭に置き、〔類話〕〔文献〕〔参考〕の欄で各地の類話の梗概と近世以後の文献の原文を添える編み方をとる。