三千疋の名馬と姫を包んだ皮
どんな伝承か
しまんの長者は四方に蔵を建てながら子がなく、御台所が清水の観音に金橋・銭橋・駒橋・姫橋を三十三ずつ架け、肌の小袖や白味の鏡、五尺のかづらを重ねて捧げた。天竺から五色の虫を申し下ろして子種と名づけ、やがて姫が生まれる。十二の年、姫は親の厩に赤白黒あわせて三千疋の名馬を見に下り、額や肩に文字の現れた一頭の美しさに心を寄せた。長者は怒って馬をごんが河原へ引き出し、杭に結んで曝した。姫が死んだ馬を三度撫でると生臭い雨と風が起こり、姫はせんだん栗毛の皮に包まれて天へ昇った。三月十六日、白き虫は姫、黒き虫は馬の形として舞い下り、桑の木の葉で飼われて、つぢ子・庭子・舟子・たぎ子と名を得たという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第1巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第1巻』は、叢書『日本伝説大系』のうち北海道と青森県の伝説を収めた巻である。人間の始めやコロポックル、アイヌの神謡、岩木山一代記、おしら祭文、義経や弘法大師の事跡、狐や大蛇の話、地名や神社の由来などを、口承の資料を中心に採る。伝承地を記した例話を冒頭に置き、〔類話〕〔文献〕〔参考〕の欄で各地の類話の梗概と近世以後の文献の原文を添える編み方をとる。