月に立たされた水汲み嫌いの童子
どんな伝承か
荷菜に伝わるアイヌの語りである。童子がどうしても水を汲もうとせず、炉縁の台木や戸口の柱を火箸で叩いては、お前たちは水を汲まずにすんで羨ましいと言い続けた末、川端へ下りたきり戻らなかった。探しに出た語り手が川を下ると、いとう、あめます、ますの群れが次々に上ってきたが、いずれも人間に悪口を言われるのが癪だと言って居所を明かさない。最後に会ったさけの群れだけが、自分たちは神魚と呼ばれるのが嬉しいからと教えた。童子は物臭を罰せられ、手桶を提げて月の神のもとに立たされていたという。
原典より
童子は、炉縁の前にある台木を火箸で叩いたり、つついたりしながら「美しいなあ、汝は台木だから(人でない故)、水など汲まずにすむんだ。—— 日本伝説大系 第1巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第1巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第1巻』は、叢書『日本伝説大系』のうち北海道と青森県の伝説を収めた巻である。人間の始めやコロポックル、アイヌの神謡、岩木山一代記、おしら祭文、義経や弘法大師の事跡、狐や大蛇の話、地名や神社の由来などを、口承の資料を中心に採る。伝承地を記した例話を冒頭に置き、〔類話〕〔文献〕〔参考〕の欄で各地の類話の梗概と近世以後の文献の原文を添える編み方をとる。