山刀を差した万太幾の翁の悔い
どんな伝承か
湯瀬で、山人にまじって山刀を腰に差した翁に会った。万太幾、すなわち狩人の名だという。翁が語るには、自分は若い頃、国々を駆け歩き、ずほう山と称して黄金が出ると言い立てては山という山を掘り崩し、人の金を巻き上げて気楽に暮らす盗人まがいの者であった。その報いか、今はこんな夜寒の頃でさえ垢じみた布の帷子に粗末な物を食い、猪や猿を撃ってはかない世を渡っていると悔いる。この報いが末の子まで及ばねばよいがと言い、煙草の火を吹き捨てて去っていった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第2巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第2巻』は、岩手・宮城・秋田の三県に伝わる伝説を話の型ごとに集めた伝説資料集である。山の争いや沼の主の手紙、巨人の足跡、八郎太郎、ザシキワラシ、河童、掃部長者などの伝説を、口承の聞き書きと近世以降の地誌・縁起から採る。凡例のとおり各項は伝承地を示した例話を冒頭に据え、〔類話〕〔文献〕〔参考〕を続け、柳田・高木による話型名を添えた項もある。