棺を覆う黒雲と払子の僧
どんな伝承か
榛原郡御前崎町(現御前崎市)の話。昔、村のある人が死に、焼場近くの砂地で葬式をしていると、向こうの空の雲がたちまち皆の頭上まで延びてきて、棺を覆ってしまった。引導を渡していた僧はその棺の上に飛び上がり、払子を振るって一心に経を誦した。しばらくすると棺を覆っていた黒雲はどこかへ消え、和尚の法力が強かったため死体はさらわれずに済んだという。この死体をさらうものを「クワシャ」と呼ぶ。和尚もよほど疲れたとみえて、式を済ませたあと村の「ニッ家」の海福寺でしばらく休息してから本寺へ帰ったと伝えられる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第7巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第7巻』は、愛知・静岡・岐阜・長野の四県の伝説を集めた伝説資料集の一巻である。笠寺観音や日本武尊から天狗・山姥・八百比丘尼・夜叉ヶ池、石や池や塚の由来、白米城・一夜山まで九十七の項目を立て、口承を中心とする伝承を収める。各項目は伝承地を明記した例話を冒頭に置き、『日本伝説名彙』などの対応する題名を添えたうえで、〔類話〕〔参考〕〔文献〕を続けて近世以前の記録の原文まで示す。