人魚を呑んで老いなくなった娘
どんな伝承か
昔、丸栖村に高橋某という家があった。ある夜、庚申講が開かれて近所の人を饗応し、徹夜で談話した。そこへみめうるわしい美人が現れて講の仲間に入れてほしいと願い、皆と夜を更かした。次の庚申の日、その美人が高橋の家に来て、今日は私の方で庚申講を営むから来てほしいと招いたので、請われるまま彼女の家へ行き、山海の珍味の饗応を受けた。帰りに土産として人魚をもらったが、帯を締め直そうと立った折に懐から人魚が座敷に転がり落ち、この家の二、三歳の少女が手に取るなり呑み込んでしまった。家人は驚いたが後の祭であった。その少女は老いずに長命し、数百年を経て若狭の国に至って尼寺に住み、後に若狭で定に入ったと伝える。今も高橋氏の家の下の深渕を尼の渕と称している。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第9巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第9巻』は、日本伝説大系編集委員会が編んだ伝説資料集の一巻である。三重・奈良・和歌山・大阪の各地に伝わる伝説を、三輪山・安珍清姫・弘法清水・油掛け地蔵など百余りの話型ごとに集める。各話型は例話を冒頭に据えて『日本伝説名彙』などとの対応を示し、〔類話〕に伝承地と出典つきの梗概を並べ、〔文献〕に近世以前の史料の原文を添えて補う構成をとる。