侍の刃を受けた芥川の片袖地蔵
どんな伝承か
旅の侍が芥川の旅籠での夕食のとき、給仕についた女中に旅先の浮気心が働き、一夜妻にと口説いたが拒まれた。宿の亭主に尋ねてみると、まだ娘であるが、毎晩裏木戸からどこかへ出かけていくようだという。嫉妬心と好奇心から、侍はその夜、女のあとをつけた。女中は慣れた足どりで夜道を歩き、草の生い茂る原っぱでうずくまった。男と逢っているのかと思った侍は、様子を確かめもせず、腹立ちまぎれにいきなり刀を振りおろした。ところが女中のうずくまっていたところには地蔵が立っており、よく見るとその片袖が斬り落とされていた。地蔵は、毎晩拝みに来る信心深い女中の身替りになったのである。翌朝、殺したはずの女中が侍の部屋へ来た。以来、芥川の人たちはこの原っぱの地蔵を身替りの片袖地蔵と呼んで信仰するようになったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第9巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第9巻』は、日本伝説大系編集委員会が編んだ伝説資料集の一巻である。三重・奈良・和歌山・大阪の各地に伝わる伝説を、三輪山・安珍清姫・弘法清水・油掛け地蔵など百余りの話型ごとに集める。各話型は例話を冒頭に据えて『日本伝説名彙』などとの対応を示し、〔類話〕に伝承地と出典つきの梗概を並べ、〔文献〕に近世以前の史料の原文を添えて補う構成をとる。