下女千代の頬に代わった頬焼地蔵
どんな伝承か
茅原の里の助太夫という富家に、千代という下女がいた。千代はいつも地蔵尊を信じ、農場へ昼飯を運ぶ前に、まずその初穂を尊前に供えるのを常としていた。ところが下男たちは、千代が地蔵堂で先に食べ、残りを運んでいるのだと邪推して家人に訴えた。怒った家人が焼けた火箸を千代の片頬に押し当てると、千代はたちまち倒れた。同じころ外出していた助太夫が地蔵堂の下を通ると、堂の中から煙が立った。驚いて入ってみると火の気はなく、尊像の右頬に新しい焼け跡がある。家へ帰って事情を聞き、千代を呼んで見ると傷ひとつない。地蔵が身代わりに受けたのだと悟り、以来これを頬焼地蔵と呼ぶようになったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第9巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第9巻』は、日本伝説大系編集委員会が編んだ伝説資料集の一巻である。三重・奈良・和歌山・大阪の各地に伝わる伝説を、三輪山・安珍清姫・弘法清水・油掛け地蔵など百余りの話型ごとに集める。各話型は例話を冒頭に据えて『日本伝説名彙』などとの対応を示し、〔類話〕に伝承地と出典つきの梗概を並べ、〔文献〕に近世以前の史料の原文を添えて補う構成をとる。