鉄を食んで生まれた弁慶
どんな伝承か
中海に面した長海町には弁慶森という小山があり、西の野原町の沖には弁慶島が浮かぶ。前者は弁慶の生誕地、後者は幼い弁慶が捨てられた島だという。母の弁吉は紀州田辺の郷士誕象の娘で、器量が悪く縁が得られず、出雲の縁結びの神に願をかけて長海の地に住みついた。やがて山伏姿の天狗と契り、鉄を欲しがって鍬を九枚半かじったのち、髪も歯も生えそろった赤子を産む。乱暴が過ぎて島へ捨てられた弁慶は、砂を落として島と岸をつなぐ道を築いて戻り、諸寺を巡って学んだ。十五の年には新庄の鍛冶成相に名刀を打たせ、二度と同じ刀を作らせまいとその鍛冶を斬って出雲を去ったと伝わる。
原典より
<高木——「弁慶島」 柳田——「弁慶島」>中海に臨む松江市長海町に弁慶森と呼ぶ小山があり、その西の野原町の沖に弁慶島と呼ぶ小島がある。—— 日本伝説大系 第11巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第11巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第11巻』は、山陰の鳥取・島根両県の伝説を集めた日本伝説大系の一巻である。矮姫による穀物の伝来、大山の山くらべ、伯耆の白兎、雲州皿屋敷、七尋女房、牛鬼、隠岐の後鳥羽上皇などを、伝承地を明記した口承の例話で示し、類話と近世以降の文献を添える。「文化叙事伝説」「自然説明伝説」の部に分けて話ごとに番号を付し、凡例のとおり例話・類話・文献・参考の順に並べ、多くの話に高木・柳田による伝説名を添える。