九枚まで数えて泣く松江の皿屋敷の亡魂
どんな伝承か
正保のころ、松江の藩士が南京渡りの皿十枚を秘蔵していた。腹黒い妻女が日ごろ憎んでいた下女を陥れようと、そのうち一枚を割って井戸へ落とし、盗んだのだろうと責めさいなんだ。下女は身の潔白を証すすべもなく、井戸端で首を吊って死んだ。それからというもの、夜ごと井戸のそばに亡魂が現れ、悲しげに皿を数え、九つまで数えては十と言えずに泣き伏す。噂は家中に広まり、主も苦しんだ。ある剛胆な武士が一夜屋敷にひそみ、女が九つと数えたところへすかさず十と声をかけると、姿はふっと消え、以後は現れなくなったという。
原典より
<柳田―「皿塚」「皿屋敷」>正保年中のこととか、松江の藩士某が南京の皿十枚を秘蔵していた。—— 日本伝説大系 第11巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第11巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第11巻』は、山陰の鳥取・島根両県の伝説を集めた日本伝説大系の一巻である。矮姫による穀物の伝来、大山の山くらべ、伯耆の白兎、雲州皿屋敷、七尋女房、牛鬼、隠岐の後鳥羽上皇などを、伝承地を明記した口承の例話で示し、類話と近世以降の文献を添える。「文化叙事伝説」「自然説明伝説」の部に分けて話ごとに番号を付し、凡例のとおり例話・類話・文献・参考の順に並べ、多くの話に高木・柳田による伝説名を添える。