春祭りに盥の水を濁す池の娘
どんな伝承か
出雲の国松江に松平頼母という千五百石取りの武士がいた。子に恵まれず伯耆の大山へ祈願したところ、美しい女の子を授かる。娘が十六歳の年、大山へお礼参りに出かけた。五月二十四日の春祭りの日、ふもとの赤松の池にさしかかると娘は池を見たいと言う。おつきの者が駕籠の戸を開けると怪しいものが飛び出し、黒雲に乗って池の底へ沈んでいった。駕籠には娘も乳母も残っていない。池の中から、毎年春祭りの日には松江の家へ帰るので盥に水を張っておけとの声があり、その水は翌朝必ず赤土で濁っていたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第11巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第11巻』は、山陰の鳥取・島根両県の伝説を集めた日本伝説大系の一巻である。矮姫による穀物の伝来、大山の山くらべ、伯耆の白兎、雲州皿屋敷、七尋女房、牛鬼、隠岐の後鳥羽上皇などを、伝承地を明記した口承の例話で示し、類話と近世以降の文献を添える。「文化叙事伝説」「自然説明伝説」の部に分けて話ごとに番号を付し、凡例のとおり例話・類話・文献・参考の順に並べ、多くの話に高木・柳田による伝説名を添える。