堤を崩し続ける太兵衛蟹の恨み
どんな伝承か
太兵衛蟹は冬を除いて一年中群れ棲み、堤防や畦の土を崩して村民の手に余る厄介者だが、この蟹には言い伝えがある。昔、佐太川を開削したとき、佐陀本郷の清水藪沖は難工事で、堰を築いてもすぐ崩れて一向にはかどらなかった。工事責任者の清原太兵衛もついに匙を投げたが、その時、誰とはなしに人柱を立てようという話が出る。太兵衛も動かされ、一人の人夫が水底に葬られて、以後工事は進み完成した。しかし人夫の恨みは消えず、蟹となって堤防に穴をあけ、絶えず崩し続けたという。人々はこれを太兵衛蟹と呼んでいる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第11巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第11巻』は、山陰の鳥取・島根両県の伝説を集めた日本伝説大系の一巻である。矮姫による穀物の伝来、大山の山くらべ、伯耆の白兎、雲州皿屋敷、七尋女房、牛鬼、隠岐の後鳥羽上皇などを、伝承地を明記した口承の例話で示し、類話と近世以降の文献を添える。「文化叙事伝説」「自然説明伝説」の部に分けて話ごとに番号を付し、凡例のとおり例話・類話・文献・参考の順に並べ、多くの話に高木・柳田による伝説名を添える。