大江の美人塚と菖蒲売りの夫
どんな伝承か
島根県八束郡東出雲町下意東の字五輪の墓地、意東川の東方の田の中、旧国道の脇に大江の美人塚がある。夫は上意東古畑の人で、常に愛妻の姿を描いた絵を持ち歩き、田仕事の折には竹竿の先に挿して牛を追いながら眺めていた。ある時大旋風が吹き、その画像は遠く京都の内裏へ落ちた。絵の美しさに驚いた内裏は諸国に命じて探させ、美人を召し上げた。夫は端午の節句だけ菖蒲売りが内裏に出入りできると聞き、大江の菖蒲を切って上京したが遅れ、五月六日に着いて内裏の周りを売り歩いた。妻は障子越しに夫を認めて喜び、その夜逃れ出て美人塚の前までたどり着いたが、わが家の煙を見て気がゆるみ息絶えた。夫は泣いてこの地に葬ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第11巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第11巻』は、山陰の鳥取・島根両県の伝説を集めた日本伝説大系の一巻である。矮姫による穀物の伝来、大山の山くらべ、伯耆の白兎、雲州皿屋敷、七尋女房、牛鬼、隠岐の後鳥羽上皇などを、伝承地を明記した口承の例話で示し、類話と近世以降の文献を添える。「文化叙事伝説」「自然説明伝説」の部に分けて話ごとに番号を付し、凡例のとおり例話・類話・文献・参考の順に並べ、多くの話に高木・柳田による伝説名を添える。