真間の入江に身を沈めた手古奈
どんな伝承か
千五百年ほど前から語り継がれてきた話だという。そのころの真間は真間の浦と呼ばれ、真間山のふもと近くまで海であった。あたりの人々は飲み水に難儀していたが、真間山のふもとの井戸からは不思議に冷たく澄んだ水が湧いていた。毎日その水を汲みに来る手古奈という娘は、身なりこそ粗末だが美しく心やさしく、多くの若者から妻にと望まれた。誰かを選べば他の人を悲しませると思い悩んだ末、娘は花の散るように真間の入江へ身を沈めた。村人が築いた墓の地に、いま手古奈霊堂が立っている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第5巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第5巻』は、叢書「日本伝説大系」の一巻をなす伝説資料集である。埼玉・千葉・東京・神奈川・山梨の伝説を扱い、二つの太陽、蹴裂明神、ダイダラボッチ、平将門、源頼朝、豪徳寺の招き猫、黒塚、山の背競べ、親捨てなどの話ごとに、口承を重んじて選んだ例話を掲げる。各項は例話に〔類話〕〔文献〕〔参考〕を添え、類話は伝承地ごとに梗概で示し、文献は近世以後の史料を原文で抄出し、柳田・高木の分類による話型名を併記する。