経を奪った蛇と中山の七経塚
どんな伝承か
市川市の中山に伝わる。日蓮が法華堂で百日の説法を続けていたとき、一人の美しい女が現れ、曼荼羅と法号をいただきたいと願い出た。日蓮が花瓶の水を浴びせると、女はたちまち蛇の正体をあらわし、経文八巻を奪って逃げ去った。蛇は逃げる途中で七巻を落とし、落ちた場所にそれぞれ塚を築いたのが、いまの七経塚だという。蛇はさらに千束池まで走って池へ飛び込んだが、池のほとりの桜の枝には、最後の八巻目の経が引っかかったまま垂れ下がっていた。この桜の皮を煎じて飲めば疱瘡の熱さましに効くと言い伝えられている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第5巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第5巻』は、叢書「日本伝説大系」の一巻をなす伝説資料集である。埼玉・千葉・東京・神奈川・山梨の伝説を扱い、二つの太陽、蹴裂明神、ダイダラボッチ、平将門、源頼朝、豪徳寺の招き猫、黒塚、山の背競べ、親捨てなどの話ごとに、口承を重んじて選んだ例話を掲げる。各項は例話に〔類話〕〔文献〕〔参考〕を添え、類話は伝承地ごとに梗概で示し、文献は近世以後の史料を原文で抄出し、柳田・高木の分類による話型名を併記する。