母を刺した息子が籠もった行人塚
どんな伝承か
元和のはじめごろ、片原に住む武士が戦に出ているあいだ、その妻は近所の浪人を家に引き入れて睦んでいた。これを知った息子は短刀で浪人を討とうとし、あやまって母を刺し殺してしまう。取り返しのつかぬことをしたと悟った息子は、庭の隅に穴を掘り、竹筒を一本立てて自ら土の下へ入った。それから七日ほどのあいだ、地の底から小鉦を打つ音が絶えず聞こえていたという。のちに誰かがその場所へ塚を築き、行人塚と呼ぶようになった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第5巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第5巻』は、叢書「日本伝説大系」の一巻をなす伝説資料集である。埼玉・千葉・東京・神奈川・山梨の伝説を扱い、二つの太陽、蹴裂明神、ダイダラボッチ、平将門、源頼朝、豪徳寺の招き猫、黒塚、山の背競べ、親捨てなどの話ごとに、口承を重んじて選んだ例話を掲げる。各項は例話に〔類話〕〔文献〕〔参考〕を添え、類話は伝承地ごとに梗概で示し、文献は近世以後の史料を原文で抄出し、柳田・高木の分類による話型名を併記する。