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医者を母のもとへ呼んだ孝行狐

所在地愛知県稲沢市井之口町
年代明治初年
登場渡辺文斉
出典愛知県伝説集

どんな伝承か

明治の初年ごろの話。いまは稲沢市になった中島郡大里村の井の口に、渡辺文斉という医者がいた。ある晩遅く、急病人が出たと呼び起こされ、春日村の仏恩寺近くの家まで連れ出された。病人は老婆だったが、手当てが早かったので大事なく済みそうだった。ところが貰った茶菓子を家で見ると蕗の葉に包んであり、不思議でならない。そのうえ、その家に忘れ物をしたことに気づいて翌日仏恩寺のあたりまで行ってみると、それらしい家がまるで見当たらない。たしか寺の裏手だったと記憶をたどって寺を回ると、そこは墓地で、その片隅に忘れ物が落ちていた。このあたりに住む孝行な狐の仕業だったのだろうと、文斉はむしろすがすがしい気持ちで帰宅した。

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※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません

出典の文献について

愛知県伝説集(福田祥男・1961年(昭和36年))

『愛知県伝説集』は、福田祥男が昭和三十六年に著した愛知県の伝説集である。尾張・三河の山や海、淵や池、地蔵と観音、石や塚、城跡、地名、動物と変化、植物、祟りと怨霊などにまつわる言い伝えを、原型に忠実に再現することをめざして平易な文で語り直し、話の末に郡市名を添える。山の伝説から其の他の伝説まで十五の部に分け、あとがきでは前年に出した『愛知県伝説集・虹と黒潮』を全面的に改稿し増補したと記す。

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