首を落とされ白い鳥になった上人
どんな伝承か
武甲山の持山に年老いた上人が暮らしていた。死期を悟った上人は、念仏往生をするので影森の鍛冶屋で大きな鎌を作ってもらうよう小僧に命じた。白衣をまとった上人は、鉦の音が止んだらこの紐を引けと言い残して岩屋に入り、首に鎌を掛けて念仏を始めた。四日目、待ちきれなくなった小僧は鉦がまだ鳴っているうちに紐を引いてしまう。駆け込むと上人は首を落とされて果てており、その体は白い小鳥となって恨めしげにカキット、カキットと鳴いて飛び回った。小僧は正気を失い、鎌を打った鍛冶屋も重い熱病に倒れた。今も秋になるとこの鳥が武甲山を鳴き巡るという。
原典より
武甲山持山に老齢な一人の上人が住んでおりました。—— 秩父の伝説と方言 より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
秩父の伝説と方言
『秩父の伝説と方言』は、秩父市教育長鶴沢福松の序を付し、編集委員が執筆整理にあたって編んだ秩父地方の伝説と方言の集成である。秩父市と秩父郡に伝わる伝説を集め、武甲山麓のジジイ・ババア石、橋立鍾乳洞の悪龍、畠山重忠や坂上田村麻呂にまつわる話、伐ると祟る天狗松などを語り口調で記す。伝説は石・水・塚・屋敷跡・山と人物・地名・社寺および城跡・木に関する八つの部に分け、話によっては他地方の類話を注記する。