泥足で証文を届けた阿弥陀
どんな伝承か
『新編武蔵風土記稿』に載る田植地蔵系の話で、野上下郷(旧樋口村)の阿弥陀堂にまつわる。土地の領主滝上十郎道信はこの阿弥陀像を命を預けるほど信仰していた。五郎太郎という者との訴えのため鎌倉へ向かった道信は、大事な証文を宿に置き忘れたまま先を急いだ。すると後ろから名を呼ぶ声がし、振り返ると大雨の中を泥だらけの衣の裸足の僧が、杖の先に紙を挟んで差し出していた。忘れた証文だった。礼を言おうと顔を上げた時には僧の姿はなく、訴えは証文のおかげで勝った。帰郷して堂に詣でると阿弥陀像の足が泥まみれで、届けてくれたのはこの仏だったと道信は悟ったという。
原典より
新篇武蔵風土記稿という本に語られている田植地蔵系のお話ですが、秩父郡野上町下郷(旧樋口村大字野上下郷)に阿弥陀堂がありました。—— 秩父の伝説と方言 より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
秩父の伝説と方言
『秩父の伝説と方言』は、秩父市教育長鶴沢福松の序を付し、編集委員が執筆整理にあたって編んだ秩父地方の伝説と方言の集成である。秩父市と秩父郡に伝わる伝説を集め、武甲山麓のジジイ・ババア石、橋立鍾乳洞の悪龍、畠山重忠や坂上田村麻呂にまつわる話、伐ると祟る天狗松などを語り口調で記す。伝説は石・水・塚・屋敷跡・山と人物・地名・社寺および城跡・木に関する八つの部に分け、話によっては他地方の類話を注記する。