犬に変えられた長者の身内と永福寺
どんな伝承か
秩父市寺尾の西陽山永福寺は、伊予親王の菩提を弔うため、遍照僧正が土地の領主に命じて建てさせたと伝える。昔、讃岐国に、金持ちなのに困っている人を少しも顧みない欲深な長者がいた。行脚の僧が立ち寄って一食を乞うても、長者は米一粒さえ与えなかった。そこで僧は代金を払って米を求め、それを犬に食べさせると、長者の身内が犬に変じてその犬と餌を奪い合った。驚き嘆いた長者は己を悔いて救いの道を僧に尋ね、僧は因果の道理を説いた。長者は犬になった身内を連れて諸国の霊場を巡り、永福寺に参った時ようやく人の姿に戻せた。以後長者は熱心な信者となり、人のために余生を捧げたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
秩父の伝説と方言
『秩父の伝説と方言』は、秩父市教育長鶴沢福松の序を付し、編集委員が執筆整理にあたって編んだ秩父地方の伝説と方言の集成である。秩父市と秩父郡に伝わる伝説を集め、武甲山麓のジジイ・ババア石、橋立鍾乳洞の悪龍、畠山重忠や坂上田村麻呂にまつわる話、伐ると祟る天狗松などを語り口調で記す。伝説は石・水・塚・屋敷跡・山と人物・地名・社寺および城跡・木に関する八つの部に分け、話によっては他地方の類話を注記する。