十年後に戻った天狗娘
どんな伝承か
今から二百年ほど前、露藤のある家に天狗娘と呼ばれた娘がいた。娘は幼い頃、誰も知らぬ間にいなくなり、親も部落の人々も探し回ったが見つからず、神隠しに遭ったものとして、いなくなった日を命日に弔った。それから十年ほど過ぎ、娘のことも忘れがちになった頃、娘はひょっこりと姿を現した。見違えるほど成長し、夜でも目が見えるようになっていた。どうしたことかと尋ねても、何も聞いてくれるなと言うばかりで一言も語らなかった。その後のある晩、盗人が押し入って家財を背負い逃げようとすると、娘は盗人めと叫ぶや槍で一突きし、見事に脚を突いた。盗人は品物を投げ捨てて逃げ、この時から娘は天狗娘と呼ばれるようになったという。
原典より
今から二百年程前、露藤の或る家に「天狗娘」と云われている一人の娘がおりました。—— 高畠町伝説集(昭和三十二年(1957)刊/高島高校文芸班編) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
高畠町伝説集(昭和三十二年(1957)刊/高島高校文芸班編)
山形県東置賜郡高畠町(屋代・亀岡・和田・二井宿・糠野目・高安・露藤ほか各地区。一部は隣接の米沢市・南陽市宮内・長井市)に伝わる伝説を、神仏/人物/怪異/動物/什物/地物/地名/地誌 の八篇に分類して集成する。屋代神社の鬼女縁起、犬の宮・猫の宮、安久津八幡、狐狸むじなの化かし、天狗・怪物・沼の怪、青葉の笛や応挙の幽霊画、伊達・上杉の城館跡や古戦場、地名由来など、高畠の地に根ざした怪異・霊験・由来譚を地区つきで網羅する。