西来院に詣でた近野武兵工の霊魂
どんな伝承か
入生田部落に近野武兵工という人が住んでいた。百二、三十年前の人で、よく働いて多くの財産を残した。晩年、風邪気味で床についた。もう駄目だろうという日の夕方、同じ部落の今野某が帰る途中、羽織袴で歩いてくる武兵工に出会った。良くなられて何よりだ、どこへ行くのかと尋ねると、久しく菩提寺に無沙汰しているから行ってくるところだと笑って答えた。同じ日の夕方、菩提寺である亀岡の西来院の僧が山門で見ていると、羽織袴の男が石段を上ってくる。武兵工が今日参上したというので、僧は先に立って位牌壇へ向かったが、いくら待っても来ない。そこへ武兵工が亡くなったとの知らせが届き、さては霊魂であったかと合点したという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
高畠町伝説集(山形県立高畠高等学校文芸班(編)・1957年(昭和32年))
『高畠町伝説集』は、山形県立高畠高等学校文芸班が熊木成夫教諭の指導で編み、昭和三十二年に高畠町伝説集刊行会から発行した伝説集である。高畠町とその周辺に伝わる社寺の縁起、人物、怪異、動物、地名の由来などを、古老からの聞き書きと古記録から採り、内容の多くは郷土研究家安部名平次の蒐集による。神仏・人物・怪異・動物・什物・地物・地名・地誌の八篇に分け、町長の序と校長・安部名平次・武田好吉の文、編者の後記を付す。