嫁おさんに化けた五輪窪の小狐
どんな伝承か
今から七、八十年ばかり前は至る所に狐が生息していたが、その中におさん狐と呼ばれる狐がいた。今の五輪窪のあたりにいた小さな狐で、よく人家に近づいて餌をあさるので人の目にもついていた。大して悪さはしなかったが、時々人を化かした。ある年の秋、露藤の某が五輪窪の畑へ行こうと萱野の道へ入ろうとすると、胡桃の木の下に狐が寝ていた。人の気配で目を覚ました狐は、二、三度草の上に転がったかと思うと姿を消し、代わりに若い女が立っていた。よく見ればそれは西の某氏の嫁のおさんである。よくもおさんに化けたと思いながら後をつけると、まさしく西の某氏の家へ入っていった。それから誰言うとなく、おさん狐と名づけられたという。
原典より
今から七・八十年ばかり前は至る所に狐が生息していました。—— 高畠町伝説集(昭和三十二年(1957)刊/高島高校文芸班編) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
高畠町伝説集(昭和三十二年(1957)刊/高島高校文芸班編)
山形県東置賜郡高畠町(屋代・亀岡・和田・二井宿・糠野目・高安・露藤ほか各地区。一部は隣接の米沢市・南陽市宮内・長井市)に伝わる伝説を、神仏/人物/怪異/動物/什物/地物/地名/地誌 の八篇に分類して集成する。屋代神社の鬼女縁起、犬の宮・猫の宮、安久津八幡、狐狸むじなの化かし、天狗・怪物・沼の怪、青葉の笛や応挙の幽霊画、伊達・上杉の城館跡や古戦場、地名由来など、高畠の地に根ざした怪異・霊験・由来譚を地区つきで網羅する。