竜ノ口の刑場に走った光と折れた太刀
どんな伝承か
文永八年九月十二日、侍所の平頼綱が兵を率いて松葉ヶ谷の草庵を襲い、経巻を破り、法華経で日蓮を打ちすえたうえで捕らえた。表向きは佐渡流罪とされたが、実は死罪にするつもりで、夜になると日蓮を裸馬に乗せ、七里ヶ浜の磯伝いに処刑場として知られた竜ノ口へ連れて行った。門弟の四条金吾がすがって泣くと、日蓮はこれこそ法華経の信者の本望だと戒めたという。いよいよ首を斬ろうとしたその時、目のくらむ光が空を走り、太刀は二つに折れ、兵も馬も逃げ惑った。幕府は恐れて死罪を取りやめ、佐渡へ流したと伝わる。
原典より
突然目のくらむような光が空を走り、刀をふりあげた武士の眼はくらみ、太刀は真っ二つに折れた。—— 神奈川の史実と伝説(小森良章・1975年(昭和50年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
神奈川の史実と伝説(小森良章・1975年(昭和50年))
『神奈川の史実と伝説』は、新聞記者から県政の仕事に転じた小森良章が昭和五十年に著した郷土史の読み物である。倭建命の東征から鎌倉幕府の滅亡までを範囲に、神奈川県内に残る伝説を十一の篇にまとめ、走水の弟橘姫や足柄山の金太郎などを取り上げる。各篇は伝承地を副題に掲げ、伝説とその背景にある史実を結びつけて語り、古事記や吾妻鏡などの記録を引きながら著者の推測も交えている。