東樹院の文福茶釜
どんな伝承か
笹下の関にある真言宗東樹院には、狸にまつわる文福茶釜が伝わる。昔のある夜、気品のある美しい女が寺を訪れて一夜の宿を求め、老住職は温かい食事と寝具を出して快くもてなした。翌朝ていねいに礼を述べて帰った女は、数日後にまた現れ、先日の感謝のしるしにと柿本人麻呂の像を描き、花鳥風月の四字を書いて、茶釜を一つ添えて去った。しばらくしてこの女が犬に噛み殺される出来事があり、初めて正体が狸だったと分かった。寺は三つの品を宝として大切にしてきたが、火事で絵と書は本堂とともに焼け、茶釜だけが灰の中から見つかったという。寺がタヌキ寺と呼ばれるのはこの話による。
原典より
源範頼と大寧寺(横浜市金沢区片吹町) 一七七石老山の源海上人(津久井郡相模湖町) 一八九五反田のおとめ地蔵(愛甲郡伊勢原町) 二一〇—— 神奈川の伝説(谷川平夫(文)/読売新聞社横浜支局 編・1967年(昭和42年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
神奈川の伝説(谷川平夫(文)/読売新聞社横浜支局 編・1967年(昭和42年))
『神奈川の伝説』は、読売新聞社横浜支局が一九六七年に編んだ神奈川県内の伝説集である。読売新聞神奈川県民版に昭和四十年九月から四十二年八月まで八十回連載された「神奈川の伝説」のうち六十五回分を収め、文は谷川平夫記者が書き、伝説の地を訪ねて住職や古老に聞いた話と現在の様子を添える。樹木・石・塚・水・坂や島・屋敷址・社寺・禁忌・地名の部に話を分け、大藤時彦の序文と巻末の解説・索引を付ける。