蛇体で機を織った中将姫の曼陀羅
どんな伝承か
東松山市高坂の高済寺には、中将姫が蓮の糸で織ったという曼陀羅が寺宝として伝わる。『川越地方郷土研究』によれば、継母にいじめられた姫は京からこの寺の僧を頼って下り、蓮池の中で亡き母に会えたという。『東松山市の伝説と夜話』の伝えでは、姫は村境の人里離れた機屋にこもって三日三晩機を織り、中を決して見るなと言い置いた。ところが和尚が禁を破ってのぞくと、姫は蛇の姿で織っていた。見られたと悟った姫は恥じ入り、それまでに織り上がっていた阿弥陀三尊来迎の曼陀羅だけを残して消えたという。
原典より
その機屋の中は決してのぞいてはならぬといましめられていたにもかかわらず、和尚がのぞくと、姫は蛇体となって機を織っていた。—— 埼玉県伝説集成——分類と解説 中(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
埼玉県伝説集成——分類と解説 中(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成)
『埼玉県伝説集成——分類と解説 中』は、韮塚一三郎が編んだ埼玉県の伝説集の中巻で、上中下三巻のうち歴史伝説を収める。地名・屋敷・家系・聖地・城や堤や橋・神仏・神体と宝物・偉業・事件と紛争の九章に分け、県内各地の伝説を『新篇武蔵風土記稿』などの文献と土地の人からの聞き取りによって集めている。一話ごとに所在地と出典または資料提供者を記し、同じ類型の話をまとめた後に柳田国男らの説を引く〈解説〉を置く。