カナダ帰りの与那国女ヴァンクーバー
どんな伝承か
石垣島のマクダ部落の貧しい家の外で、高く細い木の臼で漆喰用の土をこつこつと搗いている女がいた。彼女はヴァンクーバーと呼ばれる与那国出身の女で、亜米利加(カナダ)へ渡ったが亭主に捨てられて戻ってきたという。上品な物腰だが悪い着物を着ており、帰ってきた当座は靴も帽子も洋服の仕事着も持っていたが、二、三年のうちに次第に破れてしまった。親類がたびたび与那国へ帰るよう勧めても従わず、今ではこの位ならカナダに残っていればよかったと折々嘆息するという。子を持たぬ不幸は、島では殊に堪えがたいものとされた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第1巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第1巻』は、柳田国男の著作を集めた著作集の一巻である。椰子の実の漂着から日本人の渡来と稲作を海の道に求める論考と、海神宮考・みろくの船・根の國の話・寶貝のこと・稻の産屋などの諸篇、大正期の南島旅行に基づく『海南小記』、昭和二十六年八月の自序をもつ『島の人生』を収める。いずれも海と島を舞台に、ニライカナイや宝貝、漂着や島の復興をめぐる民俗と歴史を論じている。