流人正三郎の生き残り
どんな伝承か
青ヶ島の噴火の中に、たった一人きわめて異様な生き残りがいた。安永三年の書き上げに外に流人一人とある、その流人である。幕府小普請組鈴木新三郎の惣領正三郎で、享保十九年の冬に弟の数馬とともに八丈島へ流され、三年後の佐野新蔵の騒乱に加担して、弟は小島へ、兄は青ヶ島へ移された。それから四十八年目のこの年まで生きていたことになる。流人帳には天明五年十月に死んだとあり、それが誤りでなければ、噴火のあと八丈へ逃げ戻って半年足らずで果てたのである。最も奇抜な不良少年の末路であった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第1巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第1巻』は、柳田国男の著作を集めた著作集の一巻である。椰子の実の漂着から日本人の渡来と稲作を海の道に求める論考と、海神宮考・みろくの船・根の國の話・寶貝のこと・稻の産屋などの諸篇、大正期の南島旅行に基づく『海南小記』、昭和二十六年八月の自序をもつ『島の人生』を収める。いずれも海と島を舞台に、ニライカナイや宝貝、漂着や島の復興をめぐる民俗と歴史を論じている。