郵便袋をめぐる船と島の駆け引き
どんな伝承か
近ごろ耳に入る青ヶ島の便りは、不自由な島だという話ばかりである。島は命令航路の寄航地で、月に一度は郵便物を積みに船が来る決まりだが、浜の条件が悪いので船側は早く離れたがり、島側は少しでも産物を積ませたくて、わざと郵便袋を出すのを渋るのだという。筆者の友人も島人の家へ招かれ、あれこれ食べ物を勧められて引き止められた。船へ戻ると船長がひどく腹を立て、今度こんなことがあれば置いて出ますよと言ったそうだ。もっとも、この島へ二度も行く人はまずいない。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第1巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第1巻』は、柳田国男の著作を集めた著作集の一巻である。椰子の実の漂着から日本人の渡来と稲作を海の道に求める論考と、海神宮考・みろくの船・根の國の話・寶貝のこと・稻の産屋などの諸篇、大正期の南島旅行に基づく『海南小記』、昭和二十六年八月の自序をもつ『島の人生』を収める。いずれも海と島を舞台に、ニライカナイや宝貝、漂着や島の復興をめぐる民俗と歴史を論じている。